もう一つの世界に入り込んでみる。
2025.09.27
こんにちは。ナカムラです。
いよいよ開催が目前に迫ってきた今日この頃。そんなタイミングでこの間、かなり久しぶりに寝坊をしてしまったのです。家に帰ってソファーで「ちょっと休憩」と思っていたら、いつの間にか朝に。ハッと目が覚めて、時計を確認すると時刻は7時20分。普段より1時間も遅く起きてしまったのです。カーテンの隙間から差しこんだ朝日、つけっぱなしの照明、充電されていない携帯……。「あれ、今日って休日?」と様々な考えが頭を駆け抜けました。会社に遅刻の連絡を入れるのか、はたまた、意地でも間に合わせるのか。時刻は7時22分。「まだ間に合う!」ということで、急いでシャワーを浴びて、歯を磨いて、身支度を整えていたら、7時50分。なんとか間に合った、というよりも、普段より時間に余裕が出る結果に。いつもより長く睡眠時間を取ることができて、時間にも余裕が生まれて、寝坊するのもたまには悪くないのかも。いや、きちんと目覚ましをつけよう。
さて、本日ご紹介するのは造形作家・結城琴乃さん。高知県を拠点に、木を焦がして描く“焦がし絵”という手法で、家や鳥、植物をモチーフに細い針金を巧みに操り、独自の世界観をつくり上げています。焦がし絵で描かれる作品のモノクロの陰影や、糸のように細い針金で作られる植物や生き物たちは、どこか儚く朧げで、まるで夢の中に出てくる景色のように神秘的な美しさを感じさせます。ひと目見れば、結城さんが生み出す作品の世界に入り込んでみたくなるはずです。
そんな結城さんの作品を手にしたきっかけは、妻が「手紙舎 前橋店」で一目惚れして家に迎えた「ガラスドームジオラマ」。私の中では結城さんを象徴するような作品だと感じていて、もしかしたら、同じ感想を持つ人も多いかもしれません。ガラスドームの中に漂う、しんとした静寂な空気、そしてそこに佇む一軒の家と木々。じっと眺めていると、どこか懐かしさに似た感情を抱くのです。家には玄関があり、きっとその中に誰かが住んでいるのでしょう。木の側には人物らしきものも見えます。季節は冬なのか、何人で住んでいるのか、などと、ガラスドームという小さな空間の中に広がる物語に、思いを馳せる時間がたまらなく愛おしいのです。
もっと結城さんの生み出す世界に入り込んでみたくて、手にしたのが船のオブジェ。静かな波のさざめき、海の香り、子どもたちの歓声、街頭のざわめき……。そこに広がるのはまるで異国の街のようで、いるはずのない思い出の中いる人たちの会話が聞こえてくるのです。船の甲板には大小でサイズの異なる2本の釘が見えます。私はこの釘を自身と妻に見立て、“人生”という船に乗っていこう、という決意に似た思いを作品に投影したのです。穏やかな波のときも、荒々しい波のときもあるはず。そんなときに、この作品を見たら、きっとどんな困難も乗り越えていける気がしてなりません。
「存在するもの」と「存在しないもの」の間にいるような結城さんの作品の数々。まるで別世界に迷い込んだように幻想的な結城さんの世界を、そっと覗いてみてください。その美しさに思わず息を飲んでしまうはずです。