“樹”を纏う。
2025.08.26
あらためまして、クラフェス事務局のナカムラです。「2025年やりたいことリスト」から1ヶ月ぶりにひとつ行が減りました。それはと言うと、食べたくて食べたくてたまらなかった、あんこ屋ねる・阪根さんのあんこを、ついに食べることができたのです! お誘いをしたときからずっと食べる機会をうかがっていたのですが、なかなかタイミングが合わず。あんこイベントを開催するというお知らせを見た瞬間に、「これは行くしかないでしょう!」と胸を高鳴らせた私。当日は前の予定が押すという予想もしていなかった事態に、胸というよりも心臓自体が高鳴りましたが、閉店ギリギリ30分前に滑り込むことに成功。お目当てだった冷たいお汁粉と粒あん(どちらも残り1つずつという奇跡!)をゲット、という中でまたしても予想だにしなかった出来事が……。なんていうお話は、また別の記事で。
さて、アイコン画像を見てもらうとわかるかと思いますが、私、眼鏡をかけています。でもこれ……、内緒ですよ。実は伊達眼鏡なんです。それも、2Weekのコンタクトを付けてまでして、眼鏡をかけています。なので家に帰ったら眼鏡(伊達)を外して、次にコンタクトを外して、そしてまた眼鏡(度が入っているもの)をかけます。そして翌朝は、眼鏡を外して、コンタクトを入れて、また眼鏡をかけます。自分で言うのもなんですが、なんとまあ、面倒な工程を踏んでいるものです。人生の3割は睡眠に費やしているなんて言いますが、私の場合は眼鏡をつけて外す時間も、塵も積もって、相当な時間かもしれません。では、なぜそれほどまでに眼鏡に囚われている(?)のかと言うと、それはもう、一言でまとめると眼鏡が大好きだからです。某お笑い事務所で芸人をしていたときの経験もありますが(その話はまたいつか)、パッと見て印象を強く与えられるものはないか、という悩みに応えてくれたのが眼鏡でした。そのあたりから、自分という人間を上手く表現できる眼鏡はないものかと探し求めるようになりました。ただ、その道のりは果てしなく長いものでした…….。どの眼鏡屋に行っても、どんな眼鏡を試着しても「そういうことじゃないんだよな」と、なかなかしっくりとくるものに巡り会えませんでした。そんなときに転機となったのが、ある作り手の作品との出会いでした。
それが……、63mokkoのビスポーク木製眼鏡です! 出会いのきっかけは目黒のギャラリーで行われていたatelier coin・大護慎太郎さんとの二人展。足を踏み入れた瞬間「なぜ最初からここに来なかったのだろう」と感じるほどに、今までの眼鏡屋巡りでは出会えなかった感動がそこには待っていました。「樹を纏う」というコンセプトのもと、立川市の平屋に工房を構える63mokkoの神田武蔵さんですが、小さい頃から図工と木が好きだったそうで工作授業での体験が活動の原点とのこと。神田さんにご依頼をして「ミズナラ」という木材で眼鏡を作ってもらいました。神田さんは、コミュニケーションを取りながらのオーダーメイド、ビスポークスタイルで制作しているので、まずはその流れをご紹介。ミズナラ、黒柿、カエデ、ソメイヨシノなど、神田さんが厳選する木材で作られたフレーム(オーバル、クラウンパントなど)を顔に合わせて、気に入ったものを選んで決めます。木材によって色や肌触りが異なるので、そこに注目してみるとより面白いかもしれません(眼鏡好きならわかる方も多いかもしれませんが、この試着をしている時間がたまらなく愛おしいですよね)。そして、フレームを決めたら顔周りなどの寸法を測って、実際に制作に入っていただくという形になります。制作期間はおおよそ半年ほどですが、このワクワクする時間が永遠に続いてほしいとすら思ったほどです。
※ミズナラで作られた私の眼鏡
そんな神田さんが手がける眼鏡の魅力で、まず伝えたいのは木目の美しさ。木目は人生と同じで、一つも同じものがないんです。それぞれの木が育ってきた環境(日照時間や降水量など)や年数などによって、一つひとつの表情が変わってきます。木そのものの手触りや香り、そして、年数が経つほどに出る艶だったり、木が熟してく様子を見るのがたまらなく好きです。それに、ぶつけてしまった凹みだって味わいの一つだと感じています。当たり前ですが、木が大きく成長しないとそこから木材を得ることはできません。つまり、“木材”となるまでに何十年という、かなりの年月を要するのです。まさに木目は木が生きてきた証であって、それまでの物語に思いを馳せること、それこそが“樹を纏う”ということなのではないでしょうか。そして、もう一つの魅力は「ともに成長できる」という部分です。やはりクラフト作品というものは、単なる“もの”ではなくて、一貫して“パートナー”のような存在だと感じています。例外なくこの眼鏡もそうで、気の置けない友人とどこかに出かけたり、美味しいものを食べたり、感動的なワンシーンに涙を流したり。そんな人生の一瞬一瞬をこの眼鏡を通して見ることができたら、人生はより輝いて見えるはずです。この眼鏡をかけてまだ数ヶ月ほどしか経っていませんが、すでに変化を感じている部分があります。それはテンプル部分の色。果たしてこの色の変化が良いものなのかはわかりませんが、たとえ良くないものであってもいいんです。だって、私がこれまでに生きてきた証であり、その積み重ねが形として、現象として形になっているのだから。この眼鏡を5年、10年とかけ続けていったときに、どんな色になっているのか、どんなかけ心地になっているのか、そして、私自身がどんな人間になっていくのか、今から楽しみでなりません。63mokkoの眼鏡が少しでも気になった方がいたら、クラフェスのブースだけにとどまらず、立川のアトリエに足を運んでいただきたいです。動物の毛皮や骨が飾られたりしていて、どこか山奥に来たような感覚になること間違いなし。作業場を見てぜひ「ここでこの眼鏡は生まれたのか」と、作品に注がれる思いに触れてもらいたいと思っています。ちなみに余談ですが、深みのあるグリーンが美しい日産・ラシーンという愛車のチョイスも神田さんらしさを感じる部分。一見、無骨に見えるけど、走るとわかる、洗練された美しさ。まさに神田さんならではの遊び心と実直さが映し出されているかのようです(もしかしたらアトリエの近くに停まっているかも!)。実は大護慎太郎さんもかけている63mokko・神田武蔵さんの眼鏡に大注目です!