湯浅記央(机上工芸舎)

埼玉
  • 金工
湯浅記央(机上工芸舎)

小さなころから金属が好きで硬貨を磨いたり、落ちている瓶の王冠などを集めて眺めるのが好きな子供でした。

自分が感じる金属の美しさや価値を、カトラリーなどの日常の道具という形で表現できればと考えております。

日々の中で金属がみなさまの感性に刺激を与えられれば幸いです。

Q.金工の道を志すこととなったきっかけや思いを教えてください。
理由を探すのが難しいほど、幼い頃から当たり前のように金属が好きでした。さまざまな形を集め、光を宿すまでひたすら磨き続ける——そんな子供時代の無心な時間が、現在のものづくりの原点です。理屈を超えた“好き”という衝動があるからこそ、いまも金属と真っ直ぐ向き合えています。

Q.どんな瞬間に、どんなものやことからアイデアを引き寄せていますか?
暮らしの拠点である埼玉県ときがわ町の里山の情景から、多くのインスピレーションを得ています。町を歩いている時に出会う、有機的なラインにハッとさせられる瞬間が多いです。澄んだ川の清流によって削られた石の曲線、木立が描く繊細なライン、あるいは山霧が立ち込めた時の曖昧なシルエットなど。そうした自然が作り出したフォルムを意識し、冷たく硬質なステンレスという素材へ落とし込んでいます。

Q.音楽、道具、食べ物、空間など、手を動かす時に欠かせないものを教えてください。
最も欠かせないのは、20年かけて収集してきた大量のハンマーの中から選び抜いた数本の相棒です。新品・中古を問わず、これまで数えきれない数のハンマーを手にしては試し、打刻感が馴染むものだけが手元に残りました。選び抜かれた道具が、思考を形に変える手助けをしてくれています。

Q.アートピースのような芸術的なフォルムでありながら食卓に馴染む、その匙加減はどのように探求していますか?
視覚的な緊張感と美しいラインは常に意識しています。その上で、カトラリーはギャラリーやイベントで選んでいただいた後も、さらにご家庭のキッチンで“今日使うかどうか”の選別を受け続けます。ここで選ばれなければ美しいラインも意味を持たないので、美しさを損なわないよう、あるいは引き立てる形で、口当たりや触感、重量バランスを調整しています。

Q.加工が難しいとされるステンレスの魅力や、素材について「ここは譲れない」という部分を教えてください。
ステンレスの魅力は強さと普遍性です。打ち込んだフォルムを歪ませず保ち続ける強固さと、食材の味や香りを決して邪魔しない無垢な機能性。加工の手強さと引き換えに、得るものは大きいと考えています。