鈴木潤吾
長野
カトラリーや器は木の塊を削り出すことで作り出しています。同じ樹種であっても生息環境によってその形は異なります。幹や枝、日当たりの良い方向などの条件で木目も全て異なります。同じ木であっても異なった前提条件のもと繊細な形を作り出していくため、カトラリーつひとつ全ての木目の流れを読み、木と対話をしながら手作業で削り出していきます。そのため出来上がる形は一定ではなく、その木で作ることができる最善の形を塊の中から見つけ出せるように日々取り組んでいます。
Q.木工の道を志すこととなったきっかけや思いを教えてください。
エンジニアとしてメーカーで働いていた頃、規模の大きいものではなく、自分自身の手で完結できるものづくりをしたいと考えるようになりました。その中でも、生活に身近な存在であり、地球環境を構成する自然要素である“木”を使うことで、持続可能な社会の実現に少しでも貢献できるのではないかと思い、木工の道を志しました。
Q.どんな瞬間に、どんなものやことからアイデアを引き寄せていますか?
本や映画、絵や彫刻など、日常で良いなと思ったものや事柄が、ふとした瞬間に結びついてアイデアが生まれているような気がします。素材や技法にとらわれず、自分が惹かれるものを柔軟に感じ取ることを大切にしています。
Q.音楽、道具、食べ物、空間など、手を動かす時に欠かせないものを教えてください。
最近は仕事中に自転車のロードレースを見ています。木でモノを作る作業は、1本1本全てを手作業で削り出さなくてはいけないため、膨大な単純作業の繰り返しです。ツールドフランスなどのグランツールでは、21日間ほぼ毎日4時間前後のレースが行われます。こうした長丁場なレースは単調な作業ととても相性が良く、画面を注視していなくても展開をある程度把握できるため、作業中に見るのに合っていると感じています。
Q.機械工学を学んでいた頃やエンジニア時代に培われた視点は、現在の制作活動にどう息づいていますか?
モノを作るという作業は素材によってもちろん工程は違いますが、考え方や段取りといったものは共通していると思います。大学で学んだことやメーカーでの経験は、確実に現在も活きていると感じています。
Q.草木染めや鉄染めなど独特な風合いが魅力ですが、作り手としてつい愛でたくなる作品の表情はどんなところにありますか?
アンティークの持つ、長い時間を経たからこそ生まれる色の深みや味わいに魅力を感じています。その深みを新しく作ったものにも与えられないかと考え、草木染めを始めました。また、モノの形状についても、長く試行錯誤を重ねたからこそ醸し出される雰囲気があると感じています。自分の作品にも、そんな雰囲気を纏わせることができればと常々考えています。
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