こむろしずか

北海道
  • 陶芸・粘土
こむろしずか

身近な動植物や旅の記憶、懐かしい原風景の色、光の断片など......。自分で作った詩や物語を元に、それらを抽象的かつ幾何学的に陶へ落とし込むことを試みています。

手びねりやロクロ成形を中心に、線を均質にし過ぎず、手跡や揺らぎの残る積層を大切にしながら、一点ずつ成形しています。器の中に余白やリズムを持ち、そこから想像の広がり、お使いいただく方の世界大きくなっていく器を作れたらと思っています。

毎日の暮らしを営むことは、より“生”を味わいたいというような、ともに暮らす人の健康や幸せを願う祈りに通じていると思っています。平坦ではなく凸凹とした日々の中で、作品を手に取り、お使いいただくことで、その人の大切な日々の「型」や「間」になって寄り添うことができたなら、作り手としてこの上ない喜びです。

Q.陶芸の道を志すこととなったきっかけや思いを教えてください。
美術は好きでしたが、美術を学校で学ぶことになぜか強く抵抗感があったため美大に進学はせず、その後もずっと美術に関することには惹かれていましたが、何にも携わることはありませんでした。それから日本国内と海外を旅するようになり、自然ともに生きる生活を送る中でものづくりをしたいと思い始め、然と陶芸か織りや染色のようなものをやりたいと思っていました。

何から手を付けていいのか分からなかったのでとりあえず動こうと、住んでみたい方角へとドライブしていた時、偶然立ち寄った陶芸ギャラリーで、オーナーとの軽い立ち話から未経験でアシスタントを始めることになりました。その時、陶芸家に絶対になるという強い志はありませんでしたが、陶芸の道に一歩踏み出すことは、わたしにとってはとても勇気のいる大きな決断でした。

Q.どんな瞬間に、どんなものやことからアイデアを引き寄せていますか?
ここ10年近くは、子どもの頃から時々折に触れ頭の中に浮かぶ情景の一部や、鮮明に沸いて出た言葉を元に物語や詩を創作し、それを陶器に描いています。幼い頃の、記憶自体は定かではないのに、鮮明にのこっている色や光や影や空気、異境で見た驚くべき色使いや組み合わせなどの印象も大事にしています。

また北海道育ちなので、大好きな自然の景色の色や空気感を質感として出せるようになりたいと思い、動植物も絵柄のモチーフにしています。全てに共通しているのは、心が激しく動かされた瞬間だと思います。

 

Q.音楽、道具、食べ物、空間など、手を動かす時に欠かせないものを教えてください。
音楽が大好きなので、YouTubeやラジオ番組をよく聴いています。sakanaction、ピーターバラカンさんのラジオ番組を中心に、結構ジャンルレスで音楽を聞いているんじゃないかと思っています。映画やドラマや小説の評論、お笑い番組も好きでよく聞いています。たまにスピーカーの音を消すと、今度は周囲の鳥や虫の鳴き声が大きく聞こえて、ほぼ無音という状態からは程遠い環境で制作しています。

そして仕事のスタートにコーヒーは欠かせません。毎回豆を挽いてハンドドリップしたものをアトリエに持ち込みます。またお香が大好きで、ここ1〜2年は丁字の効いたスパイシーなお香を日に何本か焚きながら制作をして、すごく気持ちが落ち着きます。

 

Q.その美しさに息を呑み、一方で厳しさも感じる北海道の雄大な自然と、どのように共生しながら制作に映し込んでいますか?
残念ながら、共生というより自然に圧倒されて押され気味です。豪雪地帯なので、除雪もままならず命の危険も感じることも何度かありましたが、コントロールの効かないことや、委ねる、あきらめる、手放すといった感覚も同時に手にしたと思います。

冬に雪の一面真っ白な景色に包まれると、白は白だけじゃなく青や他の色も含んでいることを知ったり、冷たい緊張感の中にいて潔ぎよさや温かい気持ちになったり、感情が重層的に味わえるのは、厳しい自然に近いところに住んでいるからかも知れません。

以前「エレガントシンプリシティ」という本の中で、”誰にも愛されなかったとしても、人は自然に愛されている”と言うような一文を読んでから、森に近いというか、森の中で制作していることで、お伝えできるものがあるのではないかと少し意識して制作するようになりました。

 

Q.様々な国を渡り、暮らしに“スタイル”を持つことが大切だと思ったとのことですが、こむろさんの生き方に投影されている“スタイル”にはどんな変化がありましたか?
小さな生活を大事にしてリズムを作っています。衣食住は、人が作った物を生活の中に取り入れるようにしています。梅干しと味噌を中心に季節の保存食を作って、厳しい冬を乗り越えています。市販のお惣菜もジャンクフードもファーストフードも、食べたい時は美味しいって言いながら自由に食べています。

ファッションにメリハリをつけるようになりました。特に日本舞踊を習い始めてから、おしゃれで華やかな舞台出身の先生の影響で、出かける時や展示販売の時にはなるべく着物を着るようになりました。装いとしての要素もあるのですが、心体をまっすぐにする効果があるので、心は穏やかに身体はしゃっきりとするように思います。

以前はメリハリをつけるのにこだわり過ぎて、制作の時はどんなに汚れた格好をしていてもいいと思っていたのですが、普段は制作がほとんどなので、いつも汚い格好をしていることになるのでやめました。その時期にイギリス人陶芸家のルーシー・リーさんが、白いワンピースとエプロンで作陶をしていたと聞き感激して真似をしてみました。寒いのもあってなかなかそこまで到達できていません。