ものを生み出す人とは
2026.10.01
みなさま、こんにちは。キモトです。
最近、大阪に行ってきました。目的は太陽の塔の内部を見に行くこと、そして来日は実に12年ぶりとなるフェルメールの作品『真珠の耳飾りの少女』を観に行くこと。まずは念願の岡本太郎の世界。「地底の太陽」の迫力に心震わせ、進んだ先にある「生命の樹」が目に入った瞬間、思わず「おお……!」と感嘆の声が漏れました。全ての生命の根源は太陽であるというメッセージ。これから先、人類はどのように歩んでいくべきか、万博記念公園から出た帰り道もずっと考えていました。そして、フェルメール展。資料でしか見たことのなかった作品へ近づけば近づくほど、止まらない胸の動悸。世界中を虜にする少女は、紙面で見るよりデジタルで見るより、ずっと穏やかな表情でした。まさに芸術の秋、心が満たされた日となりました。
さて、本日のクラフェスだより。本年度の私の投稿はこれで最後となります。最後のたよりのテーマに選んだのは「ものを生み出す人とは」です。遠方にいる作家さんのアトリエを訪ね、そこで何を感じたのかというお話になります。少し踏み込んだ内容になる気がしておりますが、どうかお付き合いいただけますと幸いです。
事の発端は、木工作家・結城琴乃さんからの「アトリエがオープンしたのだけど、良かったら遊びに来ない?」というお誘いでした。結城さんの拠点である高知には足を踏み入れたことがなく、いつか行きたいと思っていた私は二つ返事で向かいました。いつも東京のイベント会場でお迎えする側としてお会いしていたので、高知駅のロータリーで再会した時は、少しくすぐったい気持ちに。そこから早速オープンしたアトリエに向かい、着いた先にあったのが小さな可愛らしいアパート「コパン荘」です。
築60年になるアパートをリノベーションして作られたそうで、その一部屋一部屋は、様々な作り手がアトリエやギャラリーとして日々ものづくりに励む空間となっています。
そして、階段を上がってすぐそばの角部屋に、結城さんのギャラリー兼アトリエ「gallery綴」がありました。扉を開けると、心地よく差し込む日の光、手入れされた落ち着きのある木の家具、まるで本当に住み着いているように部屋のあちこちにいる雀のモビールや蝋引きして作られた蝶。静かで、凛とした空気を纏う、結城さんの住処がそこにありました。ノスタルジックな趣と幸福感に溢れたgallery綴、足を踏み入れた瞬間にスッと心に馴染むような居心地の良さを感じました。初めて訪れたのはまだギャラリーとしてオープンしていない出来立てほやほやの時でしたので、そんな貴重な時に招かれたこと、結城さんの優しさとおもてなしの心に胸が熱くなります。
それからまたもう1回高知を訪れているのですが、結城さんは現地でお会いする度に高知の素敵な場所を案内してくれました。四万十川を眺め、鰹の藁焼き体験をし、日曜市での食べ歩きに、四国カルストを散歩して山菜を食べたり、中津渓谷を散策したりと、本当によくしてもらいました。高知の各所へ行けたことはもちろんなのですが、私が何より尊く、ありがたいと感じたのは結城琴乃さんという作り手が、日々感じとっていることを一緒に見せてもらえたことです。自然豊かな環境で、常に川と緑と隣り合わせで暮らしている。面白い作りの家や建物を見つけると、必ず足を止め観察しに行くなど、日常での何気ない発見をそっと掬うことができる。目にしたもの、頭に浮かんだものを「なんとなく」で終わらせるのではなく、形にする行動力。これらがものづくりへと繋がっているのではないかと感じました。
*にこ淵を眺める結城さん
そして、何より私の中で大きな影響を与えてくれたのは、人としての誠実さです。「gallery綴は、作品はもちろんだけど、人として大切にしたいと思う、そんな作家さんの作品を扱いたい、そして遥々来てくださった方には、その気持ちに応えたいから、ささやかだけどおもてなしをしたいんだよね」と結城さんは話しました。思いやりを持って人と向き合うからこそ生まれる素晴らしい輪を大切に繋いでいくその心に、私は感銘を受けました。手紙社に入る前、作家というものは感受性が豊か、手先が器用な方、正直それだけで片付けてしまっていた気がしました。ですが今となっては、良い作品を生み出し、“良い作り手”だと心から思うことのできる方は総じて人間力が高い、そう考えます。性格が良い、明るい、そういうことではなく、目の前のことに真っ直ぐ向き合う、物を長く大切に扱う、人との関係を丁寧に築いていく。真に内面が磨かれた人が生み出す作品は、心を揺さぶる力があるのです。
「ものを生み出す人とは、どんな人か」、私が東京クラフトフェスティバルの担当になってから、一番向き合い、問い続けてきたテーマでした。私の考えが正解だとは思いません。違う意見を持つ方もいるでしょう。私たちが目指すクラフトイベントは「真に素晴らしい作家が集う場にする」、この信念が共通としてあります。
クラフェス’26開催まで、あと2日。珠玉の作り手と作品と共に、みなさんのご来場を心からお待ちしております。
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